『鑑定士』
結局、商業ギルドに同行する事になったオフェーリアは、先ほどの職員と顔を合わすのが少々面映い思いもあるが気にしないことにした。
「クロード、ちょっと聞くけど、あの職員の娘に意地悪してないわよね?
私、しばらくこの町に居座るつもりだから、変な軋轢生みたくないのよ」
「大丈夫ですよ」
ニコニコしているクロードだが信用できない。
この男は昔から心の狭い奴なのだ。
「さて、それではひと通り出していきましょうか」
クロード専用の鑑定室で、アイテムバッグから次々と取り出していく。
「ここも相変わらず、鑑定士はクロードひとり?」
「そうなのです。
うちの一族でも最近は【鑑定】持ちは生まれにくくなっていて、ジル殿のところはいかがでした?」
クロードの一族とジルの一族はまったく別の系統の一族だ。
クロードの方がその由来は一段と古く、その祖となる魔法族の家はもう途絶えて久しい。
「その血統を残すためにも早く結婚した方がいいのと違う?」
「私の妻となるのはpreciousしかいませんので。
家の方は弟に任せてありますよ」
相変わらず暖簾に腕押しなクロードだが、鑑定士の代わりとなる魔導具の開発を考えた方が良いのかもしれない。
「それにしてもpreciousのポーションはいつも素晴らしい効能ですね。
これなら良い値で売れそうですよ」
「兵士さんたちや冒険者が使うのだから、そこそこにしておいてあげてね。
特に【簡易ポーション】は思い切った値でいいと思うの」
「preciousはお優しいですね」
「そんなこと言ってないで。
あなたも聞いてるんでしょう?
ダンジョンや森の異変を」
「はい、もちろん」
そこから商業ギルドから依頼を受けて被害に遭った冒険者パーティーの詳細を聞いていく。
クロードの話が進むにつれて、オフェーリアの眉間の皺が深くなっていった。
「それってダンジョンが活性化(この場合スタンピードを指す)してるんじゃないの?」
「ええ、我々もそう結論づけています」
「面倒なことになったわね」
口ではそういうが、同時に胸の中はワクワクもしている。
ダンジョンの変化はその中に生息する魔獣や素材の変化にも繋がるのだ。