『マティアスの怒り』
先王の頃からの重臣に関してはマティアスも常々頭を悩ましてきた。
なので今回の一件を利用してそんな連中を一掃しようと考えた。
皆、叩けば埃の出るものたちばかりだ。
少し突いてやればボロを出してくれる。
「フェリア、これからちょっとばかり忙しくなる」
「ん〜、んん?
ややこしいことになった?」
オフェーリアはすべてお見通しである。
「【ぼくちゃん】は離れていた方がいいかしらね。よければ連れてダンジョン島にでも行ってるけど?」
「そうだな……」
一瞬の逡巡ののちマティアスは決断した。
「すまないが頼めるか?」
窮鼠猫を噛むの例え通り、追い詰められた連中は何をするかわからない。
そしてその矛先は一番弱い【ぼくちゃん】に向くのは必然であろう。
幸いダンジョン島なら管理もしやすい。
ダグルたちも連れて休暇気分で出かけることになった。
これにはしょうがないこととはいえ、マティアスが大いに拗ねた。
そしてその八つ当たりじみた攻撃はすべて“連中”に向くことになる。
「では気をつけて」
名残惜しそうなマティアスを残して、オフェーリアは【ぼくちゃん】とダグルたち護衛隊を乗せた飛竜を率いて飛び立った。
「クソぉ、俺だって一緒に行って一緒に遊びたいのに。
フェリアとダンジョンでひと暴れしたいのに。
何でクソ爺の相手なんかしなきゃならないんだよ!!」
一応その地位に相応しい所作や言葉遣いをしてきたマティアスが、その被っていた猫をかなぐり捨て本気で激怒している。
「最速で始末してやる。
おいおまえら、殴り込みをかけるぞ!!」
どちらかと言えば行儀のいい近衛たちが戸惑っている。
反してマティアスはどこのゴロツキかと言わんばかりにノリノリだ。