『黒幕の末路』
一度折られた部位を魔法で治癒させてまた折る。
それを繰り返されて……激痛だけでなく、心も折れた。
そしてその場面を見せられるものたちはとっくに反抗心を失っていた。
一応隊長にあたる男は口を割ろうとしなかったが、それよりも先に人としては壊れてしまっていて、二度と人としての暮らしはできないだろうと思われる。そのことが残された騎士たちを震え上がらせたのは言うまでもない。
「で、黒幕はわかったの?」
どうやら黒幕は、騎士たちが拷問などに遭って口を割らされても自分に直結しないようにしていたようだが、我先にと喋りはじめた騎士たちの証言からひとりの男が浮かび上がる。
彼は先代の王からの信任も厚かった重臣であったが、少々勘違いが過ぎたようだ。
…………異変はまず彼の末娘の嫁ぎ先で始まった。
彼女の息子、この家の長男と三男が急な病で翌日にはあっさりと命を落としたのだ。
そして彼の直系の孫、嫡男の長男は乗馬の訓練中落馬して死亡し、旅行中だった次男一家の乗った馬車は崖崩れに巻き込まれて全滅した。
もうここまで来ると偶然で片付けられるものではない。
黒幕の重臣は己と一族の身辺の警護を厚くしたが嘲笑うかのように年頃の外孫が誘拐され、それはそれはおぞましい亡骸となって彼の元に届けられた。
オフェーリアはやられたらやり返す、何倍にもして報復する、徹底的にやる。
そこに一切の手抜きはない。
心身ともに限界だった重臣は、マティアスの足元にその身体を投げ出し、【ぼくちゃん】襲撃を全部自白したが、マティアスに「この件に関しては離宮に任せてある」とけんもほろろに追い返され、その間にも一族のものが倒れていく。
そしてとうとう彼は正気を失い、幽閉されるのであった。