『危機』
「フェリア」
「了解……【探索】」
オフェーリアは森全体を【探索】してみた。
すると首を捻るような現状が見えてくる。
「【ぼくちゃん】は何人で出かけていったの?
何かずいぶんとがちゃがちゃしているんだけど」
【ぼくちゃん】付き護衛隊の面子の何人かがこの場にいた。
「はい、今日は分隊長の他5名が同行しております」
副分隊長のマローンがとっさに答えた。
「じゃあ……急いだ方がいいわね」
マティアスと頷き合ったオフェーリアは瞬時に【飛行】を発生させると飛び上がった。
今、森の中では通常の獣だけでなくたくさんの人型が存在している。
これらは7つの人型を取り囲んでいて、探索図の点状に記された標を見るだけで異常を感じ取れる。
「我らも急ぐぞ!」
上空に見えるオフェーリアの姿を追って森の中へと駆け出していく一団の、先頭はもちろんマティアスだ。
その頃、森の中では【ぼくちゃん】とダグルたち一行が騎士たちに囲まれていた。
離宮の森に離宮付き以外の騎士たちが入ってくること自体異例なのだが、ここに来て日の浅いダグルたちは気づいていない。
「何者だ!!」
たった6名だが【ぼくちゃん】の周りを囲み、にじり寄ってくる騎士たちの全方向からの攻撃に備えている。
「我々は本宮の第三騎士団である。
お仕えする御方は我々もそちらも同じはずだ。
何も言わず、その“獣”を渡してもらえないだろうか!」
その第三騎士団を名乗るものの要求は驚くべきものだった。
到底受け入れられるものではない。そして彼らに“命令”したものがいるはずだ。
「断る!!
貴殿らは彼の保護者が誰か、存じておられるのか?!」
「そのようなことは関係ない。
我々は貴方らと敵対するつもりはないのだ。
素直に渡して頂きたい!」
騎士団はここに30名ほどを派遣している。
人数で押して【ぼくちゃん】の身柄を強奪しようと言うのか。
その時何名かが鞘から剣を引き抜いた。
「おまえら……」
ダグルの背に冷たい汗が流れた。
目の前の騎士の言葉は詭弁以外のなにものでもない。
彼らは最初から【ぼくちゃん】を弑するつもりなのだ。