『行方』
「?そういえば遅いわね」
調薬のため朝から篭っていたログハウスから出てきたオフェーリアがダルメリアから【ぼくちゃん】の不在を報告されて溢した。
「今日はダグルたちと“探検ごっこ”に出てるんだったよね?」
「はい、そう伺っております」
ダルメリアも心配そうだ。
【ぼくちゃん】たちが“探検ごっこ”で向かったのは王宮の敷地内、離宮に隣接した庭のような場所だ。
そんな近くにいるはずなのに、そろそろ夕刻だというのに先触れさえない。
しばらく経って薄暮が訪れ、居ても立っても居られずに探しに出ようとしていたところマティアスが戻ってきた。
経緯を聞いて表情を曇らせたマティアスは自分に付いてきた近衛の兵に捜索を命じ、自分も出るために支度を始めた。
「マティアス、私も行くわ」
「そうだな。フェリアは空から探してくれたら嬉しい」
「わかったわ。
行き先は裏の森からその先でいいのよね?」
オフェーリアはダルメリアに確かめるように尋ねている。
離宮付きの近衛も揃って肯定した。
あまり良い予感がしない。
「マティアス、急ぎましょう」
竜人国に正式な貴族制度はないが一部、特権階級は存在する。
その連中にとってオフェーリアの存在は獅子身中の虫であり、【ぼくちゃん】にいたっては汚らわしい獣以外の何ものでもなかった。
その存在は離宮内で守られていて付け入る隙がなかったのだが、森での活動中ならその域ではない。