『これから……』
「こっ、これは竜種?まさか地竜か?!」
下処理されて裁断を待つばかりの状態の革が何か、革防具を専門に作ってきた職人はひと目でそれが何か看破したようだ。
「そうね。それならさほど目立たないでしょうし、革鎧と籠手をお願いするわ」
左腕用の籠手はすぐに作り直すことになるだろうが、些細なことだ。
オフェーリアとしてはすべてが大したことではないが職人としてはそうではない。
彼は希少な地竜の素材を渡されて呆然としていた。
「そろそろ王宮に帰らなくてはならない」
もう【ぼくちゃん】の腕が治ったことは広く知られている。
なので多くの重臣から帰還をせっつかれているのだ。
「そうね。
特にマティアスはこれ以上はキツいわね」
無理を通してこちらで公務を行なっていたのだ。
「まあ、今すぐ戻ってこいと言われているわけじゃない。
だがまあ、そろそろだな」
【ぼくちゃん】が眠っている今、ふたりは込み入った話をしていた。
「ねぇ、私は【ぼくちゃん】を連れて帰りたいと思ってるんだけど、どう思う?」
「【ぼくちゃん】次第だと思うけどな。
もちろん居場所はある」
今のこのダンジョン村では【ぼくちゃん】は2人の養子として見られている。
だが王宮ではどのように思われるだろうか、おそらく良く思わないものも出てくるだろう。
何しろ今現在もオフェーリアを異分子としてしか見ていないものもそれなりにいるのだ。
「【ぼくちゃん】にとってどちらが幸せなのかはっきり言ってよくわからない。
……本人(本獣?)はここにいる方が幸せなのかもしれないけど、あんなことがあったここに置いておけない」
オフェーリアはそう言って俯いた。