『革鎧』
「さて【ぼくちゃん】新しい腕の調子はどう?」
ベッドに座らせた【ぼくちゃん】の左腕を取り、オフェーリアはじっくりと肩口から指先まで観察し触診する。
さすがに筋肉の発達具合まで再現することは出来ずに、右腕と比べると顕著に弱々しい。
体毛の色も薄く全体的に『若く』感じられた。
「元々利き腕と比べたら筋肉量が少なかったけど、やっぱり新たに生やすと本当に最低限なのね」
オフェーリアが前回【アムリタ】を調薬したときは販売して終わりだったので、事後を見るのはこれが初めてだった。
「【ぼくちゃん】
しばらくは訓練が必要だけど、すぐに前のようになるから心配しないで」
以前は【ぼくちゃん】は身軽に枝から枝へと腕を伸ばし移動していたが、今はおそらく新しい腕では体重を支え切れないだろう。
筋肉を増やすトレーニングを考えなければならない。
それと並行してダンジョン探索にも連れて行くつもりだ。
「【ぼくちゃん】
新しい革鎧を作るのに採寸するぞ」
ダグルが職人を連れてやって来た。
彼は最初【ぼくちゃん】の新たな腕を見て驚愕し、大喜びして小躍りしたのち泣いた。
大の、それも厳つい大男が顔をくしゃくしゃにして号泣して、そして泣き笑いした。
「キュ?」
「身体つきも少し変わってるからな。
身体にぴったりの革鎧を誂えよう」
ダンジョン村は大規模になってきて武器や防具を作る職人も多く移住してきている。
今回の防具職人もそんな中の1人で、すでに評判を呼んでいた。
「キュゥ、キュン」
身体の表面を流れるように動く巻尺がこそばゆかったようだ。
【ぼくちゃん】は身を捩ってこそばゆさに耐えている。
横でオフェーリアは異空間収納の中の素材を選んでいる。
「そうね〜
これからまだまだ大きくなるから普通の革でいいかしらね。
このくらいが適当かしら」
職人はオーガあたりかと想像していたのだが、出された革はとんでもないもの(オフェーリアにとっては大したことのない素材)だった。