『再生』
【アムリタ】の完成品を持ったオフェーリアは、一度【ツブネラアロン】の生息地に向かい、目についた開花した花を摘んでからゲルを収納し急ぎダンジョン村のゲルに転移した。
「おお、いつもながら突然だな」
こちらはどうやら夕食前のようだ。
お付きの兵士らとダンジョンに行き、泥んこになって帰ってきた【ぼくちゃん】をマティアスが風呂に入れていたようだ。
「た、ただいま」
2人を前にして小刻みに震えるオフェーリアを見て、その様子のおかしさに気づいたマティアスが立ち上がった。
「フェリア、どうした?」
「……できたの」
「ん?」
「出来たの、これ」
オフェーリアがその手にあった瓶を見せて、マティアスはその言葉の意味を理解し、言葉にならない声を上げた。
そしてフェリアを熱く抱擁した。
「まだ夕食前なのね。ちょうどよかったかもしれない」
実は欠損を復活させる【アムリタ】はその過程で激痛を伴うのだ。
そしてその時嘔吐するなどの例もあり、嘔吐物を喉につめ窒息することを恐れて、胃はなるべく空がよいとされている。
「【ぼくちゃん】このお薬を飲んだら、また前みたいに遊べるの。
……腕が生えるときはすごく痛いそうだけど、我慢して飲んで欲しいの」
幼児の知能しかない【ぼくちゃん】だが、フェリアママがこの薬を作るために彼方此方駆け回っていたことは知っている。
それはとても大変なことで、一緒にいられないことも多くて寂しく思っていた。
「キュ、キュウ」
絨毯の敷かれた床に【ぼくちゃん】を座らせる。
【アムリタ】を飲ませると、その痛みに暴れる可能性があるので椅子やベッドは使えないのだ。
「じゃあ、これを飲んで」
オフェーリアとマティアスが見守るなか、【ぼくちゃん】は渡された瓶を口にし中の液体を嚥下した。
「キュウーー」
その効果は顕著だった。
【ぼくちゃん】は右手をついて全身の毛を逆立てて痛みに耐えている。
それは切断されたときのそれに勝るほどだ。
「ギュウーーギャーーッ」
肉が盛り上がり皮が張っていた切断面から突き破って、白い骨が生えてくる。
ぼとぼとと血が滴ったがすぐにそれは止まり、見る見る間に筋肉や血管が形成されそれは腕の形をとり始めた。
「これは……」
マティアスが目を見張っている。
【ぼくちゃん】もようやく落ち着いてきたのか悲鳴のような叫び声が収まってきている。
「【ぼくちゃん】どう?触るよ」
ひと声かけたオフェーリアは爪さえも再生された左腕をよく観察する。
どうやら体毛が生えるのにはまだ少々時間がかかるようだが、関節なども異常はなさそうだ。
「よかった、よかったね【ぼくちゃん】」
【ぼくちゃん】を中心にして抱き合った3人はともに涙を流していた。
「まま、ぱ、ぱ」