『【アムリタ】完成!』
明日の夜の開花を待つ間に、オフェーリアは密かに最も設備が整っているログハウスに転移した。
ここに彼女が戻ってきていることに誰も気づいていない。
もしも気づいたとしても周りとは元々結界で遮断されているため接触することは叶わないのだが。
「久しぶりに戻ってきたけど、うん、何も変わらないわね」
ここで【ツブネラアロン】の乾燥など下処理をし、他の素材の確認もして調薬へと移るつもりだ。
すべての準備を終えてから異空間収納から【ツブネラアロン】を取り出し、素早く【乾燥】の魔法をかける。
「うん、いい感じ」
自然乾燥の場合どうしても時間がかかるため変色してしまうのだが、魔法で乾燥させたためまるで押し花のように生花の時の色を残している。
その乾燥した花からていねいに茎やガク、おしべやめしべを取り除き、花粉だけ慎重に取り分けておく。
それから他の素材、古竜の心臓を乾燥させて粉末化したもの、特殊な状況で高位聖職者がリッチ化したものの魔石の粉末、そして本来これは毒なのだが沼地に生息するヒルの上位種の毒素。あとはそれらを混ぜ合わせるための高位中和剤を投入する順番に並べておく。
そして卓上型の調薬用釜を設置した。
ここからが勝負だ。
オフェーリアはひとつ深呼吸をした。
「出来たわ」
オフェーリアは感慨深げに手の中の瓶を見つめた。
【アムリタ】が完成した。
この薬は特殊な素材ばかりを使用すること、そして製作者が大量の魔力を消費するため非常に難易度の高い調薬技術を必要とするのだ。
「これでやっと【ぼくちゃん】を治すことができるわ。よかった」
オフェーリアの眦に光るものがあった。