『【ツブネラアロン】』
月明かりの無い闇夜。
本来なら真っ暗闇の中、その森の一画はぼんやりと発光している。
オフェーリアはそちらに向かってゆっくりと歩いていった。
あたりは静かでオフェーリアの歩くサクサクという音しかしない。
気配を探ってみても小動物すら引っ掛からなかった。
「ふわぁ……」
その一帯、森の中の少し開けた場所に点々と、可憐な白い花が咲いている。
その花が開くことによって発光しているのか、蕾の状態のそれは普通の花と変わらないようだ。
「何か、思ったよりもたくさん咲いているのね」
パッと見たところだがポツポツと30本ぐらいは咲いているように見える。
そのほかにももうすでに枯れているものや蕾のものもあってこのあたり一帯に群生しているようだ。
オフェーリアはゆっくりと近づいていって、一本手折ってみる。そして観察していると見る見る劣化していくのが確認された。
「っ!」
動揺したオフェーリアはすぐに異空間収納にしまってようやくこの【ツブネラアロン】の希少性に気づく。
「なるほどね。
こんなにすぐ枯れるのなら採取してもいい状態で売ることが難しいわね。
こんな辺境の村にアイテムバッグ持ちがそうそう居ると思えないし、たとえこれ全部採取したとしても素材として使用できるのは……」
そして枯れるのと乾燥は違う。
きちんと乾燥させることができればすぐに調薬することができる素材なのだが、枯れた花はただのゴミだ。
「じゃあ、採取しましょうか」
どうやら花だけ取って株を残しておけばまた来年開花するようだ。
オフェーリアは花を摘みすぐに異空間収納に入れることで劣化を防ぐ。
そうして開花しているものをすべて採取し終わるとやにわにゲルを設置した。
そう、オフェーリアは今ここにある蕾の状態の花も咲くまで待って摘んで帰ろうと言うのだ。




