『天候回復?』
もう今日はゆっくりと読書でもしようかと思っていたところ、急にミュールと冒険者たちが慌ただしく動きだした。
「?」
ゲルの出入り口の垂れ布をめくり上げてその様子を見ていると、ミュールがやってきた。
「フェリアさん!
急で悪いが今すぐ出発します。
すぐに支度して下さい!」
「え?ええ」
ついさっき、このままここで様子見すると言っていたのに急な展開にびっくりする。
だがすぐに着替えてゲルの外に飛び出した。
オフェーリアはすぐにゲルを収納すると、ミュールたちに貸し出していたゲルも収納する。
すでに彼らは自分の荷物を荷馬車に積んでおり、馬も馬車に繋がれていた。
「説明は後だ。
悪いが結界を解いてくれ」
周りに置いた結界石を拾って結界を解いていく。
そしてアルフの手を借りて荷馬車に乗ると、すぐに動きだした。
「急かしてすまない。
雪がおさまってきて、空の具合が良くなってきたんでね、急だったが出発することにしたんだ。
今なら新雪だから馬車も動けるが、これが夜を迎えて凍るほどの寒さになれば、それこそ雪が溶けるまで動けなくなっちまう」
なるほど、言われてみるとその通りだ。
道が凍ってその上に雪が積もったら、馬車の移動は悲惨なことになる。
オフェーリアはミュールの行商人として天候を読む力に感心した。
「幸い馬たちは休養がバッチリだ。
今日はこれから出来るだけ先に行きたいが、できれば次の村までを目指している」
新雪を蹴散らして馬車が走る。
結構なスピードが出ているが、その走りは安定している。
ミュールはなんとしても村に到着したいらしく、いささかオーバースピードだがあえて無視しているようだ。
「ねぇ、こんなに飛ばして大丈夫なの?」
オフェーリアは一緒に荷台に乗っている冒険者に小声で聞いてみた。
「……このくらいならたまにある。
行商人の馬車は足回りも頑丈に出来ているしおそらく保つだろう」
ヒヤヒヤしながらオフェーリアはいつでも【防御】の魔法をかけれるように身構えていた。