『旅は道連れ……』
「【ツブネラアロン】ですか……」
行商人ミュールがため息混じりに言った。
「【ツブネラアロン】?」
「そんなの知ってるか?」
「いや、俺は聞いたことがない」
ミュールは知っているようだが冒険者3人組は知らないようだ。
「また……難しいものを探してるんだね。
だから学士殿自らがこんなところまで。
何か納得した」
パチリと焚き火の火が爆ぜる。
「ミュールさんは扱ったことがある?」
「いや、直接見たことないがたまに話は聞くよ。
……この辺境最北部のルートは3人の行商人が順繰りに回るんだけど、今年の春一番は俺の番なんだ。
この時期、運が良ければ一生に一回くらいはお目にかかる……って感じかな」
「それって高値で売れるのか?」
「行商人はそれなりの値で買い取るみたいだけど最終的にはオークションなんかでべらぼうな高値で取引きされるそうだ。
フェリアさんもオークション待ちだったのかい?」
「そうね。そして痺れを切らしてここまでやって来たってわけ」
「そうか……
よかったら一番奥の村まで同行するかい?
どうせついでだし。
この先馬もそうそう手に入らないだろうし」
「いいの?」
「もちろん。
旅は道連れと言うだろう?」
それにミュールは今しがたオフェーリアに馳走になった、異国の料理にすっかり魅了されていた。
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。
そのかわり食事は任せてちょうだい」
「おお!それは楽しみだ」
オフェーリアは慣れ親しんだ揚げ物料理、オークカツでもてなしたのだがこの辺境国は貧しく、食用油は高価で庶民がそうそう使うことができない。なので揚げ物料理を知らないものはまだまだ多かった。
ミュールにとっては見たこともない【ツブネラアロン】よりオークカツの方が重要度が高かったのだ。




