『魔導具』
「酷い目にあったフェリアさんを宿屋のベッドでゆっくり眠らせてやりたいけど、ここは村と村の間隔が開いていて残念ながら今日中に最寄りの村に着くことができない。
なので良さそうな場所を探して野営になるが、すまない」
お互いにかしこまった言葉遣いを止めにする事になって、ミュールも気軽な言葉で話しかけてくる。
「こちらこそ迷惑かけてごめんなさい。
私は野営でも問題ないです。自分用の魔導具も持っているので」
まったく荷物を持っていないオフェーリアに、ミュールは不思議そうな顔をする。
そんなミュールに向かってローブの合わせを開くと腰のベルトについているポーチを見せた。
「アイテムバッグです。
これにすべて入っているので、馬には逃げられましたけど失った荷物はないの」
ミュールは行商人らしく理解して頷いた。
「だから自分の野営用の荷物は持っているわ。
だから野営でも大丈夫。
それよりも私にかまったことで村に到着できなかったんじゃ?」
「そんなことはない。
じゃあそろそろ出発して野営地を探そう」
オフェーリアはそのまま荷馬車に冒険者2人と、御者台にミュールとアルフが乗り込んで、馬車は出発した。
「やっぱり最高学府の学士様は違うな」
街道沿いに定期的に現れる野営地のひとつに、ミュールたち一行とオフェーリアが野営をしている。
彼らの目の前には多目的用のゲルとオフェーリア用のゲルが出されていて、その前に焚き火が焚かれている。
「女子のひとり旅ですから。
それなりの魔導具は用意しています」
特に彼らがびっくりしたのは使用者限定が付与されたオフェーリア用のゲル、そして結界石だ。