『行商人の行方』
オフェーリアは商業ギルドにやってきていた。
冒険者ギルドの鑑定士ルーの紹介状をもってきていたので話は早い。
「【ツブネラアロン】は特殊な素材でここでも滅多に手に入りませんね。
取り扱ったのは……5年前ですね」
ごく稀に行商人や冒険者が持ち込むことがある【ツブネラアロン】はオークションにかけられることの方が多く、前回オフェーリアが手に入れたものもそういった経由で流れてきたもののようだ。
あの時はほんの偶然だったのだが、それは特別に幸運だったようだ。
「前回持ち込んだのは冒険者ギルドの方と同じように行商人だったのですが、この人物は亡くなってますね。
3年前の行商人ランは今現在行商に出ているんですが……今年もいつもの地域に向かっているのか、調べてきましょう」
そう言って席を立った彼はすぐに戻ってきた。
「20日前に首都を出て北に向かったようですね。
行き先はいつもの北部辺境山間部の村々……
あの寒波の前に出発しています。どこか村の宿などで雪をやり過ごしてくれていればいいのですが」
かなり不吉なことを言われてオフェーリアも嫌な予感がする。
こうなれば山間部の村々を自力で回るしかないだろう。
覚悟を決めたオフェーリアは北を目指すことにした。
地図で見定めた方向に向かって、マイペースに【飛行】する。
それでも飛竜よりはるかに早く飛ぶオフェーリアは順調に距離を稼いでいた。
宿泊はわざわざ村や町によることなく、人目につかないところにゲルを出してそこで泊まる。
結界も張っているので防御もバッチリである。
「また雪かぁ」
首都から3日目、雪がちらつき始めた。
朝、ゲルから顔を出すとあたりがうっすら白くなっている。