『高高度【飛行】』
北に向かうにつれてオフェーリアは悩んでいた。
「本当に“辺境”とは言ったものね。
人が住んでいる場所同士が離れすぎてる。
これじゃあ雪解けしたってすぐに交流が始まるはずがないわ」
それは物流だけでなく人流にも言える。
飛竜便はおろか乗り合い馬車もまだ運行していないのだ。
これでは冬の間を宿屋で凌いで旅を再開したというふうを装えないではないか。
最悪バロアの首都までこのまま【飛行】するしかないかと諦めにも似た気分になりつつある。
オフェーリアはまずは大陸の北の端が見えるほど高度を上げた。
そして地図を取り出し目印になる山や川、かすかに見える町?などと当てはめていった。
「ふうむ、飛竜を使って作ったのだろうからある程度は合っているけど……まあ、歪よね」
とりあえずバロアの首都を目指すことにし、一気に高度を落としながら向かうことにするがかなりの距離がある。
「ん〜、これはショートカットしながら行ってもそこそこかかりそうだな。
【ツブネラアロン】の開花時期に間に合うかな」
オフェーリアはかなり不安になってきた。
ただ最終目的地の北部山脈はまだ雪で真っ白だ。
元々雪解けがあってないような地域らしく、それに賭けるしかない。
高高度からの自由落下で距離を稼いだオフェーリアは、3日後には首都のひとつ前の村に到着していた。
このあたりの村は首都に食糧を提供するための農村で、ここはおもに野菜を生産している。
今は畑は耕されていて種蒔きを待っている状態だ。
「お嬢さん、ひとりかい?」
この村から首都に向かう乗り合い馬車に乗るために入村しようとするオフェーリアに門番の兵士が声をかけてきた。
「はい、私は旅の学士ですが首都に向かっているんです」
ゆっくりとフードを下ろして見せると門番は納得したようだ。
その尖った耳はエルフの標。それは多少の不思議は不問となると言うことだ。
「それはちょうどよかった。
2便目がもうすぐ出発するから急いだ方がいい。
入村料はおまけしておくよ」
「どうもありがとう」
オフェーリアは馬車に向かって走り出した。