『お土産』
目が覚めた【ぼくちゃん】が寝室からダイニングに向かうといつもと違う美味しそうな匂いがして、「おはよう」と声をかけられていっぺんに眠気が吹き飛んだ。
「キュー!」
大好きな“まま”がエプロンをして、フライパンを持っている。
こういう時は危ないから飛びつかないようにと強く言われていたので【ぼくちゃん】はその場でぴょんぴょんと飛び上がった。
「すぐにパンも焼けるよ。
お顔を洗ってらっしゃいな」
「よし、【ぼくちゃん】俺と一緒に行こうな」
マティアスに抱き上げられて洗面所へ向かう間に、オフェーリアは朝食を仕上げてしまう。
まず、スープは定番のポタージュだ。
クルトンは好みで入れるため小口の深皿にスプーンを添えて用意してある。
今朝はサラダの代わりとしてほうれん草とコーンのバター炒め。ハムエッグの目玉焼きは2個だ。
焼きたてのロールパンは籠に入れて好きなだけ取るようにしている。
これにローストビーフやポテトサラダを追加で出して、オフェーリアが久しぶりに家族ととる朝食の出来上がりだ。
「キュキュー」
マティアスに椅子に降ろしてもらって【ぼくちゃん】はご機嫌だ。
こうして3人での朝食はいつぶりだろうか。
好物のポタージュスープを口の周りの毛を汚さないように飲むのも上手になった。
そうこうしているうちにデザートの桃も食べ終わって、くつろいでいるところをオフェーリアが誘った。
「キュ?」
「【ぼくちゃん】にねー、お土産があるんだよ」
そう言ったオフェーリアが居住用のゲルの横にもうひとつゲルを出して、何故か外套を取り出して【ぼくちゃん】に着せる。
そして。
「じゃじゃーん、お土産はこれ『雪』でーす!」
ゲルいっぱいに広がる真っ白な雪に【ぼくちゃん】は目を丸くしている。そして恐る恐る触ってみて歓声をあげた。
「キュイ!?」
その冷たさと初めての感触に【ぼくちゃん】は時間を忘れて遊びまくった。




