『雪が止んだ朝』
「私たちは元々の門番という仕事があるので動員されなかったが、憲兵や守備隊などは穀物なんかを配って歩いていた。
行政区が備蓄倉庫から放出したんだ」
「それじゃあひと安心ね」
「ただ町の民全員に行き渡ったわけじゃない。
現にここに来ている年寄りのほとんどがもらってないからな」
ジョーンズが憮然としている。
「そうだな。
一体どれほど配って回れたのか。
雪が降り出してから吹雪くまでさほど時間がなかったからな」
隊長がしみじみしている。
だが暖房さえしっかりしていれば寒波を乗り越えられた可能性があるということだ。
とうとうその日がやってきた。
朝起きると雪が止み太陽が顔を出していたのだ。
オフェーリアは慎重に外を覗くと、ジョーンズや隊長に警戒してもらいながら表通りに面した結界を解いた。
恐る恐る扉を開けて、遭難して凍死したゴロツキたちの姿を覚悟していたが、意外にもその姿はなくいつの間にかこの場を離れたようだ。
「とにかく私は何名か連れて行政区に行ってくる。
ジョーンズもここが気になるだろうが門の方に向かってくれないだろうか」
ジョーンズはハキハキとした返事を返し、門の番兵としての装備をつけるために部屋に戻っていく。
オフェーリアは引き時を探っている。
まずは中庭のゲルの回収だ。
発熱していた老人たちは全員平熱になり、宿の部屋に戻っていた。
オフェーリアは中庭の結界を解くという理由で兵士たちには宿の部屋に移ってもらいこちらも回収することができた。
魔導ストーブや魔導コンロなどは一般に売られているものなので置いていっても問題ない。
ただオフェーリアはこれ以上この宿屋のものに優遇するつもりはないのだ。




