『ゴロツキ』
「あれは正規の兵ではない。傭兵だ」
あの外を窺える部屋の窓際にきて、隙間から覗いたジョーンズが言う。
「傭兵?何のために?」
「俺たちも詳しくは聞いてない。
少し前にこの郡を治める領主から派遣されてきたのは知っているが、行政区の寮にいるとしか」
「そんな連中がどうしてここにいるのかしら?
それに力尽くで扉を破ろうとしている」
オフェーリアの目が据わっている。
「これは俺の想像でしかないが、どこかでウチのことを聞いて、あの連中の動物的な勘でここに食糧があると気づいたんじゃないか?」
「ねぇジョーンズ。どうするつもり?」
「あの連中は信用できない。特にこんな時はな」
一体どのような経緯で傭兵団を雇ったのかは知らないが、こんな時連中はゴロツキと大差ない。
「じゃあこのまま放置しましょ。
あの結界はドラゴンのブレスだって弾くの。
好きなようにさせておけばいいのじゃない?」
これが正規の兵ならば無視することはできないが、ゴロツキまがいの傭兵を受け入れることなど自殺行為だ。
ジョーンズは一応両親に確認を取って、そのうえで無視することにする。
一方その頃外では傭兵団が寒さに震えていた。
汗をかいているのはハンマーを振るっている男たち2人だけだ。
「駄目だ!こいつは【強化】か【防御】なんかがかけられている。
中に魔法士がいるな」
「どうするんですか、お頭」
「どうもこうもないだろう!
おまえらが馬鹿なことをしたせいでもうあの【寮】には帰れないし、何がなんでもここに押し入らなければな」
行政区でも配給される食料が減ってきており、そのことに業を煮やした一部のものが避難民から強奪するという暴挙を起こして一同追放処分を受けたのだ。
彼らには後がない。