『友との再会』
オフェーリアたちの到着が先触れされていたのだろう、馬車が止まった途端、扉が開いてひとりの女性が飛び出して来た。
「フェリア様!」
「アリシア?」
小柄なオフェーリアを抱き上げるようにして身体を密着させてきた、このふくよかな女性がアリシアなのだろう。
「うん、とーっても幸せそうだね」
10年前は華奢な美女だった彼女はすっかり貫禄がついてしまい、とても同一人物には見えない。
だがオフェーリアはその顔に面影を見出して、抱きしめ返した。
「おーい、感動の対面のところ申し訳ないが、先に中に入った方がいいと思うが?」
呆れたようなフランシスの言葉に、アリシアは真っ赤になってオフェーリアを解放した。
「今夜は泊まって下さると聞きましたわ。
嬉しいです……ああ、フェリア様はお変わりなく」
アリシアの方は……おそらくフランシスの嗜好に付き合ったのだろう。
結婚して暫くはまだ若かったので問題なかったのだろうが、ここ数年年齢が進むにつれて代謝が落ちてきて、それで太ってきたのだろう。
「魔法族の都特産の菓子をお土産にしようと思ったんだけど、止めておいた方がいいかしら……」
無意識の小さな呟きはしっかりとフランシスに拾われていて、今度は彼がオフェーリアを拘束した。
「フェリアさま〜
酷いこと言わないで下さいよ〜」
涙目で睨んでくる憲兵隊長。
しかしオフェーリアは気にしない。
「ねえねえ、プロポーズの言葉はどうだったの?」
フラワーガーデン云々は聞いていたが、それ以外に興味がある。
オフェーリアだって年頃?の娘なのだ。
「それがフェリア様、聞いてください」
「うんうん」
聞く気満々である。
「こう……私の手を取って」
フェリアの手を取った。
「『アリシア、俺はあの時お前を失ってしまうのではないかと、すごく恐ろしかった。
そして思ったんだ。
こんなふうに思えるお前は、俺の片翼なのだと』という感じで始まりまして」
この後夕食まで延々と聞かされ続けたオフェーリアは、その心がホカホカと暖かくなった気がした。
「フェリア様はあの後どうなさっていらしたの?」
「ん〜
直後は色々、あちこち行ったなぁ。
ある特殊な薬草の産地に行って、その近くに住んで居たんだけど、ちょっとトラブルがあってね」
「まあ、どんなことがあったのですか?」
かくかくしかじかと例の一件を説明してみたが、夫婦して見るからに不機嫌そうだ。
そしてラバナラではアーチボルトとの距離感が鬱陶しくなったことで、ここにやってきたと言う。
「はぁ〜
フェリア様は相変わらず厄介なのにモテモテですね」
からかい半分なのはアリシアだ。
フランシスはだんまりを決め込んでいる。
「まあ、しばらくこの町にいるつもり。
今回はダンジョンにも潜りたいしね」
ダンジョン都市での滞在は長くなりそうだ。