『凍傷』
兜を取ろうとして悲鳴をあげた兵士がいた。
オフェーリアが気づいてよく見てみると頬や額が赤くなっていて酷いところは皮が剥けて皮膚が見えている。
「大変!
兜が凍りついていて皮ごと外しちゃったのね。
皆さんすぐホットタオルを持ってくるので、無理に兜を取らないで!!」
ジョーンズはびっくりしながらも暖炉に薪を足した。女将も沸かしていた湯を桶に開けている。
そこに異空間収納から取り出した新品のタオルを放り込んでいき【熱耐性】を施した手で次々と絞っていく。
そのホカホカ熱々のホットタオルをジョーンズが運び、14名の兵士はそれぞれが兜の上から凍えてくっついた皮膚を外していった。
一番初めに皮を剥がした兵士には傷薬が塗られ、ようやくひと息つく。
そしてやっとスープに手をつけることができた。
「もう空いた部屋がない。
上はこれ以上は詰め込むことができないし、食堂でごろ寝してもらうしかないな」
ジョーンズが両親である主人と女将に話している。
そこに軽い凍傷に効く傷薬を配り終わったオフェーリアが加わった。
「あの、余計なお世話かもしれませんが魔導具のテントとかゲル、出しますよ。
ゲルなら中庭でも使えるしどうします?」
「本当か?!是非頼む。
あんたには世話になってばかりで申し訳ないばかりだ。
この異常事態が収まったら、何としても礼をする」
この主人のように、たとえ先行きが見通せなくても礼のことを持ち出すのは好印象を与える。
世間ではオフェーリアの“好意”だけをさも当然のように受け取ってそのままという存在が多い。
そんなときはもうぐったりしてしまってしばらくヒトと関わりたくなくなるのだ。
ちなみにオフェーリアは礼が欲しいわけではない。あまり物欲がない彼女には謝意を伝えるだけで充分なのだ。