『異変』
ジョーンズは父母と話し合い、明日もう一度知り合いのところを回って、本格的に扉を閉ざすことにした。
そして明朝、オフェーリアは中庭に設置したゲルから出て猛吹雪の様子を見つめていた。
「これは……もう無理ね」
遠くでゴロゴロと雪雷が鳴っている。
雪はさらに激しくなりもう1m先も臨むことができない。
オフェーリアはまず宿屋の敷地、主に裏側の中庭を中心に【防御】を付与した【結界】を張った。
これは結界石ではなくオフェーリア自身が張ったものでビドーのものと同じものだ。
とりあえず表はまだ人が出入りするかもしれないので開けてあるがそれ以外は屋根まですっぽりと覆っていた。
「フェリア!!」
まだ暗いなか起き出してきたジョーンズが駆け寄ってきて、中庭の様子にびっくり仰天している。
「もうあなたたちも出ない方がいいわ。
下手したら遭難するわよ」
ジョーンズもわかっているのだろう、悔しそうに顔を顰めている。
どうやら今日、避難するように声をかけたかったお年寄りがいたようだ。
「ずっとこのままってことはないだろうから、視界が拓けたら行ってらっしゃい。
そのかわり荷物はなしで速攻で攫ってくるのよ」
「ああ、見張りを置いてそれまで待機している」
いつのまにか寄ってきていた冒険者たちが共に頷いた。
この時オフェーリアはまだ気づいていなかったが、2階の客室の一室で体調を崩した老人がいた。
熱が出てベッドから起き上がれない状態だったのだが、いち早くそれに気づいたのは朝の洗顔用の湯を運んで行った女将だ。
「フェリアさん、具合の悪い方がいるの。
熱があるの。どうしましょう」
たかが風邪でも相手は高齢者だ。
オフェーリアはすぐに中庭に一般用のゲルを出して本人と、一緒の部屋にいた5人を移すことにした。