『調理場2』
積もる話もそこそこに、たっぷりの温かい食事を摂ってジョーンズと冒険者たちはまた出かけていった。
その間にオフェーリアは主人と共に調理場に立つ。いつもは購入しているパンを焼くためだ。
「昨夜のうちに仕込みをしてくれて助かる。
俺はそこまで気がつかなくて助かったよ」
「何となくそんな気がしたから。
人数もどんどん増えてくるし……これからどのくらいになるのかしら」
「あいつらがどれだけ連れてくるかだが、行政としてはなるべく詰め込みたいだろうな」
「……」
オフェーリアの頭にチラリとかすめたものがある。
それは、この町には一体どのくらいの食料があるのか、それを分配することができているのか。
自惚れるわけではないがここは自分がいるから問題ない。
食料を提供し助力することに抵抗はないが、博愛主義でも犠牲精神があるわけではないのだ。
オフェーリアが助けるのはこの宿屋だけだ。
果実を利用した天然酵母を使って発酵させたパン種を丸めていき、熱したオーブンに入れていく。
魔導オーブンは3台に増えロールパンが次々と焼き上げられていった。
「ここは老人が多いからできるだけ柔らかい食材がいいかしらね」
今夜の汁物はミルクスープにすることにした。
腹に溜まるようにじゃがいもや蕪は大きめにカットした。どうせ崩れるギリギリまで煮込むのだ。
スプーンを当てるだけでほろりと崩れるだろう。
「これは美味いな。
こんなふうにミルクを使うのは初めてだ」
「とろみをつけたクリームシチューも美味しいわよ。今度やってみましょう」
「おお、よろしく頼む」
小口切りのソーセージを加えたスープは老人たちだけでなく冒険者たちにも大いに好評だった。
そしてロールパン、このあたりでは白パンと呼ばれているようだ。
「こんなに柔らかくて美味しいパンは初めて食べた。いい冥土の土産になったよ。
ありがたや、ありがたや」
複数の老人に拝まれてしまって困惑したオフェーリアだった。




