『冒険者たち』
「ちわっす!」
一際元気な挨拶が聞こえてきて振り向くと、扉を開けて入ってきていたのは一目で冒険者とわかる出で立の男たちだった。
「おやまぁ、ボルリー、それにソレンタム、バーンズ」
調理場から出てきた女将が気安い様子で名を呼び捨てにした。
オフェーリアもすぐにそちらを見たがその男たちの影から出てきたのは毛布を背負ったジョーンズだ。
「途中で会ったから連れてきた。
ぼちぼち俺もひとりではキツいし」
「おばさん、久しぶり」
どうやら彼らはジョーンズたちと気安い仲のようだ。
「いやー、本当に久しぶりだね。元気にしてたかい?」
「4日ほど前に戻ってきたんだかその時こいつはいなかったなぁ。
それでいつもの安宿にしけ込んで浴びるほど飲んでグダってたらこの騒ぎだろ?
それで外に出て様子を見ていたらこいつに会ったってわけ」
「あんたら……
実家に帰らないのかい?」
「今更?兄貴が嫁を貰って親父は隠居してる実家に帰るって?」
何となく触れない方がいい話になってきたようだ。
オフェーリアは息を詰めて成り行きを見守っていたのだが、そこに割って入るように声がした。
「あの〜、そろそろ降ろしてもらえんかね」
ジョーンズと、今主に話していた男ボルリーの背中の毛布の塊がモソモソと動いて薄く積もった雪が床に落ちる。
声からして老人のようだがまだ顔が出てこない。
バーンズと呼ばれた男がジョーンズたちの背中から毛布を外してようやく現れたのは2人の老爺だ。
「女将、世話になります」
「こんな時に面倒かけるなぁ」
「2人とも何言ってるんです。
でもよかった、心配してたんですよ」
2人は兄弟で一緒に暮らしてる。
兄の方は10年ほど前までこのあたりの組長をしていた世話人だ。
そして当然ジョーンズたちの幼少期も知っていて、頭が上がらない人物のひとりだ。
「ジョーンズ、朝言っていたように私の部屋を提供するわ。
その前に暖炉の前へ……すぐに熱々のスープを持ってくるわ。
もちろんあなたたちもね」
突然現れた美少女に冒険者3人組のテンションが上がる。
そしてエルフだと気づいて目を見開く。
「あんたたち、フェリアさんにちょっかい出したら素っ裸で外に放り出すよ!!
それともちょん切った方がいいかね!?」
女将の“宣言”で冒険者たちの下腹部が縮み上がってしまった。