『家族の想いと現実』
「それは……、ごめんなさい」
「フェリアが熱心なのはわかる。
だが限度があるとおもうが?」
「うう……重ね重ねごめんなさい」
【ぼくちゃん】の右手がオフェーリアの手をソッと握りしめる。
その瞳はウルウルと潤み、まるで今この場でのオフェーリアの状態が自分のせいだと思っているようだ。
「【ぼくちゃん】もごめんね。泣かないで」
ちょっと怖い顔をして睨んでいるマティアスと抱きついてきた【ぼくちゃん】を交互に見て、それでもオフェーリアは改めて決意を固めるのだ。
身支度を整えたオフェーリアはふたりと抱擁して、宿屋の部屋に転移してきた。
こちらはまだまだ夜が明けない、外は真っ暗ななか粉雪が降り注ぎ続けている。
そんな中オフェーリアは結界を解き、ソッと階段を降りていった。
「おはよう。ずいぶんと早いな」
ジョーンズに声を掛けられて口から心臓が飛び出るかと思うほどびっくりしたオフェーリアだ。
「おはよう、あなたも早いね」
「まあ、俺は仕事柄いつもこんなだがな。
それよりもあんた、寝る時はいつもああなのか?
結界を張ってだだろう。
昨夜あれからあんたの部屋に行ったんだが、びくともしなかったぜ。
……まあ、女ひとりの旅だ、わからんでもないがな」
まさかいなかったとは言えない。
内心動揺しながら言葉にした。
「そうなの。
いつもの習慣でつい張ってしまったわ。
で、何か急用だったの?」
「いや、親父に朝の支度のことで聞いてこいって言われただけだ。
あとで調理場の様子を見て納得してたがな」
オフェーリアが寝る前にしていた仕込みを見たのだろう。
と、言っても野菜を刻んだだけだが。
「俺は夜が明けたら詰所に行ってくる。
少しは町の状況がわかるだろう。
だがあまりいい感じじゃあないな」
ジョーンズは嫌な予感をひしひしと感じ、それを振り払うことができなかった。