『束の間の休息』
さすがのオフェーリアも今日の行動はオーバーワークだった。
特に【転移】と【飛行】を繰り返し、かなりの上空まで上がったことによっての魔力の消費が堪えたようだ。
マティアスはオフェーリアを抱き上げ寝室に向かう。
もうその頃にはうつらうつらと意識を飛ばし始めていた。
「【ぼくちゃん】シーな。
ママは今日はお疲れ様なんだ」
【ぼくちゃん】は頷いて心配そうに覗き込んでいる。
「きっと無理しちゃったんだろうな。
どうせ明日も朝早いんだろうからソッとしておこう。
【ぼくちゃん】は俺と一緒なら寂しくないだろ?」
「キュッ!」
2人はオフェーリアの傍らで毛布に包まって夜を過ごすことにする。
「!!」
オフェーリアは飛び起きて周りを見回した。
そしてその場が滞在中の宿屋の部屋でなく、馴染んだゲルの寝室だったことで脱力した。
「そっか、帰ってきたんだ」
「キュ?」
灯りを絞って薄暗い中、ベッドの横で座位のまま眠っているマティアスに気づき、いっしょにいる【ぼくちゃん】に気づいた。
そして【ぼくちゃん】は毛布から飛び出して飛びついてくる。
「【ぼくちゃん】元気だった?」
「キュ!」
「そう、よかった。
私はね〜、今びっくりするくらい寒いところにいるのよ。
もう春のはずなのに雪がじゃんじゃん降ってね、あのままなら埋まっちゃうくらいよ」
「キュゥ〜?」
「そっか【ぼくちゃん】は雪を知らないのね。
今度持って帰ってきてあげる」
「キュキュ〜」
楽しみだという感情を身体いっぱいで表している【ぼくちゃん】
そんな遣り取りに気づいたマティアスがようやく目を覚ました。
「おう、もう大丈夫そうだな。
突然戻ってきてアレだから昨夜はびっくりしたぞ」
「え?私何かした?」
「キュゥ〜ン」
【ぼくちゃん】が心配そうに、残された右手でオフェーリアの背中をさすっている。
「転移してきたと思ったらろくに話しもせずバタンキューだ」
心配のあまりその瞳に怒りすら浮かべるマティアスだった。