『豪雪』
勢いは幾分マシになったが、それでも雪は降り続いている。
時刻はもう夕方になりつつあり、宿はジョーンズが連れてきた老人たちで埋まりつつあった。
だがそれらの者たちは皆、主人や女将の知り合いだったので余計なトラブルが起きることもなく、順々に部屋を埋めていった。
「ご苦労様だったわね」
もうこれ以上は日が暮れて一気に気温が下がるため、ジョーンズがもう一度出ようとするのを女将が引き止めていた。
とりあえず最初のボンズ一行ほど酷い状況のものたちはいなかったため、今はお互い懇意にしているグループが集まった状況だ。
「色々世話になっているようで悪いな。
さっきは急いでいたので礼が遅れたが、本当にありがとう」
最初、ジョーンズの父母である主人と女将は呆けてしまって使い物にならなかった。
そんなとき2人を叱咤して導いたのはフェリアである。
「食事が済んだらちょっとお願いしたいことがあるの。それと明日からはどうするの?」
「明日は一応、門に顔を出そうと思ってる。
隊長からはうちが宿屋ってことで独自に避難民を受け入れるように言われているんだ」
オフェーリアは食事の支度をした後の休憩時間に、雪雲の上に転移して今後の状況を考察していた。
「……これは2〜3日では治りそうもないわね」
マティアスと再会するまでの数十年の間、ひとつの町に落ち着いたり、放浪したこともあった。
その間の経験は天気予報にも及んでいて、オフェーリアの場合現実に上空に上がって直に雲の様子を見ることができる。
そしてその時、北方から次々と途切れることなく流れてくる濃灰色の雲があった。
「私は予言者ではないけれど、この雪はしばらく止まないわ」
ジョーンズは絶句している。
「なので食材を提供しようと思うの。
でもね、私解体は苦手でね、あなたとご主人に任せようと思ってるの」
一体何を解体させられるのか、訝しんでいるとそもそもの“お願い”が明かされた。
「調理場を整理して魔導コンロを置きたいの。
手伝ってくれるわよね?」