『根菜と肉団子の即席スープ』
竈の火は種火を残してすべて落とされ、ざっと片付けられた調理場にはまずは2台の魔導コンロが据え付けられた。
そこに寸胴鍋が置かれ、片方には水が満たされる。
調理台には今ある野菜から主に根菜が出され、2人はすごい勢いで皮を剥き始めた。
「今回は調理の速さを第一にして、すべて細かく刻みましょう。
じゃがいもは小さめの賽の目切りで」
オフェーリアは玉ねぎを半分に切って薄切りにしていく。
それをバターを熱した鍋に入れ、しんなりするまで炒めていく。
じゃがいもやかぶを入れる前に小麦粉を少し振るってもうひと混ぜした。
他の小口切りや賽の目切りをした野菜も投入して軽く炒めた。
そこにたっぷりと水を足し煮立つのを待つ。
「お年寄りだし肉団子がいいかな」
異空間収納から出したのはボウルいっぱいのコカトリスの肉団子だ。これは一度素揚げしてある。
「少しアクが浮いてきたわね。
これ、いつもどうしてる?」
「肉類のときは取っているが野菜はそのままだ」
「そうなの?こんなのでも取ると違うわよ?」
お玉を使って器用にアクを掬い、少し湯を足す。
そして肉団子を入れてじゃがいもや蕪に火が通るのを待った。
「あと味付けはこれを使いましょうか」
そう言って取り出した瓶には親指の先ほどの大きさの丸薬のようなものがいっぱい詰まっている。
「これは昔、冒険者の野営用に作ったスープの素よ。
手抜きだけど今は時間がないからこれを使うわ」
スープの素を3つ、鍋に放り込むとゆっくりとかき混ぜる。すると丸薬状のものが溶けて、良い匂いとともにうっすらと色がついた。
「もう少し煮込むからこのくらいでいいと思うけど」
サッと味見したオフェーリアは小皿に少し掬って主人に差し出す。それを口にした彼はその複雑な味の深みに感嘆の声を漏らした。
「これは……」
「とりあえずこれで寒い中をやってくる人たちがひと息つけると思う」
外ではいくらかマシになった雪の中、ジョーンズが足掻いていた。