『天候の激変4』
オフェーリアにはところかまわず慈善を振る舞う趣味はない。
気が向けば親切にしたり世話を焼いたりするが、そうでなければ平気で無視をする。
だが今回は自分も当事者なので、少々気が乗らないながらも手を貸すことにした。
「食材などは私がお役に立てるかもしれません。
これでもそれなりの備蓄は持っているので。
ただ肝に銘じておいて欲しいのは、私が手を貸すのはここだけだと言うこと。
行政や他の宿屋、そして宿泊客にも内緒でお願いします」
女将と主人は目を見開いて、激しく頷いていた。
「ではまずは……解体ってできます?」
オフェーリアは日常的に美味しいものが大好きだ。
それは母国に始まり現在所属する竜人国の食習慣を変えるほどなのだ。
なので確かに美味しいが質素な食材を使ったこの宿の食事は、たまにならいいが続くと不満が出てくる。
「まず肉類ですが、ここに解体場はありますか?」
オフェーリアの異空間収納には大量の魔獣がストックされている。
その中から一般的なホロホロ鳥やオークなどを提供するつもりだが、残念ながら解体はあまり得意ではない。なのでいつもは冒険者ギルドの解体場で捌いてもらっているのだ。
「ああ、最近はあまり使ってないが裏庭に専用の小屋がある。
以前は冒険者から直接買っていたこともあったからな。解体は俺と息子もできる」
どちらかと言えば行政方の兵士である男に余計なことを知られたくないが、それは追々である。
「まずは豚か鳥か。
豚は後始末がちょっと面倒だから、鳥の方がいいかしら」
オフェーリアの手にはいきなり現れたホロホロ鳥がぶら下がっている。
「グリル焼きやシチューもいいわね。
あとから揚げもいいけど油が高価なのよね?
それよりもこれからやってくる人や迎えに行ってる息子さんのために熱々の汁物を作らなくちゃ!」
雪は幾分弱まっているが寒さは変わらない。
行政側は一部の民の移動を促しているが、これは下手をすれば凍死者を出してもおかしくないのだ。