『天候の激変3』
「何かありましたか?」
「ああ、フェリアさん。煩くしてごめんなさい。
ちょっとね、宿泊の申し込みがあったのだけど……」
この異常な天候がいつ回復するかわからないため、この町の行政が動き出したそうだ。
現在、普通なら春を迎え流通が盛んになっているはずがまったく入荷しない状況になっている。
冬を越すためそれなりの備蓄もあったがこの天候がいつまで続くかわからない。定住人口3000人の国境の町は食材や暖をとるための薪などいつ限界を迎えるか未知数だ。
なので領主の判断でせめて薪の節約と食料の持ち寄りのため、家族や親族はなるべく固まってこの寒波をやり過ごすよう命令を出した。
そして老人の一人暮らしやほかに親族のないものは宿屋に避難するように、今憲兵が回っているところだ。
それによってこの宿にも一定数の割り当てがあったようなのだが。
「そうなの。それは大変ね」
そして女将たちは渋い表情のままだ。
「問題はこの異常気象がいつまで続くか、だ」
2〜3日で収まればいい。
だがオフェーリアの見立てでは寒気団の収束はすぐには望めない。
正確には予想できないが、この手のサイクルは大体7〜10日間隔で繰り返す。
なのであと最低5日ぐらいはこの状況が続くだろう。
「……ひょっとして食材の備蓄が拙い?」
「今のままなら何とかいけると思うが、人数と食材の入荷までの期間次第だな」
オフェーリアは今気づいたが、雪が止んだからといってすぐに物品の入荷があるとは限らないのだ。
「今さっき個人的に宿泊を頼んできた知り合いの老爺は、今ある食材を全部持って来ると言っていたけど……心配だから息子を迎えにやるつもりよ」
第三者に話を聞かせて少しは気持ちが落ち着いたのだろう。
女将の顔色が戻っていた。