『昔馴染み』
憲兵隊と防衛隊の各隊長たちは、目の前にいる少女を見て愕然としている。
「姉御……」
防衛隊長のダルタンがふらふらと近づいてきた。
「姉御、お変わりなく」
「あんたたちは老けたわね。
それで?
2人揃って今、ここに来たってことは、私が待っていた憲兵隊長と防衛隊長ってあんたたちってこと?
マジ?信じられない」
10年前、現在防衛隊長のダルタンは分隊長、憲兵隊長のフランシスにいたっては一介の冒険者だった。
「ダルタンはともかく、あんたはずいぶん出世したじゃないの。
まぁ、ともかくここに座りなさいよ」
オフェーリアはアイテムバッグからティーセットを取り出す。
魔法族の都で作られた磁器製の高級品に紅茶を注いで2人の前に出し、先ほどと同じようにシュガーポットを添える。
「そう言えばフランシスは甘いのが好きだったわね」
そう言って取り出したのはチョコレートがたっぷりとかかったソフトクッキーだ。
それを見て目を輝かせた憲兵隊長は即座に手を出した。
そして一口でパクリといくと、満足そうに頷き、2個目を手にした。
その嬉しそうな笑みに、威厳も何もあったものではない。
「後で纏めてあげるからそこそこにしておきなさい。
紅茶がさめるわよ」
ダルタンはそのまま口にし、のちに砂糖をひと匙入れた。
その隣でフランシスはふた匙み匙と入れていく。
「あんた……
それじゃあ、砂糖湯と変わりないじゃない。
本当に変わらないわね」
オフェーリアは苦笑するしかない。
「さて、そろそろ本題と行きましょうか。
あなたたちが私のポーションを買ってくれるという話だけど?」
「姉御のポーションを?
売ってもらえるのですか?」
先にダルタンが身を乗り出した。
「今の相場を調べてもらっているから、それがわかれば好きなだけ売ってあげるわよ。
フランシスのところにもね」
この時、オフェーリアはこの状況を舐めていた。
軽い口約束が仇となり、この町にしばらく滞在することになってしまうのだ。
「フェリア様、うちはあるだけ欲しい」
フランシスがそう言うとダルタンが立ち上がった。
その手にはチョコソフトクッキーがあり、何を言おうとも説得力のかけらもない。
「それじゃあ困るのよ。
具体的な数を言ってちょうだいな」
睨み合っている2人を前にして、オフェーリアはよっこいしょ、と立ち上がった。
この間を利用して宿をとりにいくことにする。