『尋問?』
上目遣いで見つめてくる少女に、男はタジタジとなる。
「常識的な疑問はたくさんある。
だがまずは、どうやってここまで来た?」
今の今までオフェーリアは適当にごまかそうと思っていたのだが、どうやら安易にごまかされてくれなそうだ。
なので真実と嘘を織り交ぜてそれらしくまとめるしかない。
「まず最初に、私はこの国の北部に生息するという、ある特殊な素材を求めてやってきました。
ビドーからは主に飛竜便を乗り継いできたのですが気候その他の都合で途中で降りるしかなく、その後は馬車や徒歩でここまで来たの」
馬車云々を除いてほとんど嘘は言っていないが、その時期は一切明言していない。
「徒歩ってあんた……」
通常ならとっくに春を迎えていて、国境越えの乗り合い馬車はおろか飛竜便も頻繁とは言えないまでもそれなりにやって来ているはずだった。
だが今年は一旦進みかけた季節が後戻りしたような状況になっている。
「気づいているだろうけど私はエルフなの。
なのであまり細かいことは詮索しないで欲しいわ」
このルーシャの住人にとって、幾らかの魔導具は流通しているが魔法は縁遠いものだ。
なので詮索云々の前にわからないことが多すぎて突っ込みようがない。
「そ、そうか。それなら、いや、悪かった」
「ごめんね。
元々魔法使いは自分の手の内を明かさないものよ。
まあ私はお察しの通りアイテムバッグに野営の設備を持っているの。
だから町や村に寄らなくても大丈夫なのよ」
アイテムバッグそのものも貴重な魔導具であるが魔法使いという存在も希少だ。
何しろ彼は今までエルフにあったことがなくオフェーリアが初めてで、先祖返りの魔法使いに一度会ったことがあるだけだ。
「もし差し支えなければ、その特殊な素材とやらを聞いてもいいか?」
「ええ、【ツブネラアロン】よ」