『ルーシャの宿屋』
オフェーリアは入国料金貨1枚を支払って解放された。
「お勧めの宿とかありますか?」
国境の町なので宿の類はたくさんあるだろうが自分で探すのは些か面倒くさい。
「案内しよう」
最初から対応してくれている重鎧の兵士が立ち上がった。
「その、わかっていると思うが宿にも色々なランクがある。
婦女子がひとりで泊まるのならそれなりの方がいいのだろうか?」
「保安さえしっかりしていれば普通でいいですよ。どうせ一泊だけですから」
「では俺の知人のところに案内しよう。
少々見かけは悪いが他は問題ないゆえ」
兵士の案内で表通りから路地を入る。
そしてもう一本奥に入る路地を通って、自分ひとりなら絶対に来ないようなところに向かっていった。
「このあたりは、この町を通過点としているような旅人は滅多に来ない。
だがそれほど込み入った道ではないので迷うことはないだろう」
指さされた方をよくみてみると通りの角に交わる道の名が表示された看板が出ている。
「ずいぶん親切なのね」
「この国境の町は元々は小さな村だったのだが、それが徐々に大きくなってな、なので元の村が今でも行政の中心なのだ。
なので旅人や新たな住人などのために表示は多い目になっている」
「なるほどね」
古い町などではよくあることである。
順番に環状になった都市は珍しくない。
「さて、ここだ。
表は少しボロく見えるが造りはしっかりしている。何より食事が美味いんだ」
元々オフェーリアはここで食事をするつもりはなかったのだが興味をそそられる。
「女将!居るか?客を連れて来たぞ!」
造りの頑丈な扉を開け、びっくりするような大声で呼ぶとカウンターの奥から中年の女性が飛び出して来た。
「いらっしゃい。
お食事ですか、お泊まりですか?」
「とりあえず一泊お願いします」
「うちは3食ついて一泊銀貨6枚ですがよろしいですか?
昼食抜きの料金もありますが」
「では昼食抜きの方で。
明日は朝一で出発する予定ですので」
「では銀貨5枚です。
お部屋は2階の3号室です」
そして鍵を渡された。




