『お祝い2』
かぼちゃの肉詰めと共に出されたのは薄切りハム入りのコールスローだ。
シャキシャキのキャベツを刻んでマヨネーズや酢などと和えただけのサラダだが、これも【ぼくちゃん】の好物だ。
対してマティアスにはいつものポテトサラダが供される。彼は野菜が苦手なのだ。
「フェリア、この肉詰め、ソースがものすごく合ってる。
俺、これならいくらでも食べれそうだ」
「うん、たくさん作ったからお代わりオッケーだよ。【ぼくちゃん】もね」
もきゅもきゅとよく噛んで食べる【ぼくちゃん】の皿からはかぼちゃの肉詰めがほとんど消えかけている。
そしてその意識はすでにコールスローに向いていた。
「今日は食後にデザートがあるから、いつもより軽い目ね」
食事の最後に出てきたのは、これも【ぼくちゃん】の大好物、生クリームのリゾットだ。
「キュー、キュー」
「ああ、このコクが堪らないな。
俺、このリゾットなら無限に食べ続けられる気がする」
そんなことを言うマティアスなら鍋一杯でも食べることができそうだ。
「さて、今夜は【ぼくちゃん】のお祝いだから【ぼくちゃん】の好物ばかり用意したんだけど……、最後のデザートはスペシャルなものをと思って〜」
オフェーリアが勿体ぶって異空間収納から取り出したのは、2段仕立ての真っ白なケーキだった。
「キュゥ〜ン」
【ぼくちゃん】は段上を飾る、スレイプニルやグリフォンを形取った飴細工に目を輝かせている。
「これはお祝いの時に食べる特別なケーキよ。
今切ってあげるわね。
……もちろんその飴細工は全部【ぼくちゃん】のものよ」
【ぼくちゃん】の、マティアスにすら譲る気のない様子に、オフェーリアは笑みを隠せない。