『異変』
結局、パルタに到着したのは本来の予定から大きく6日遅れてのことだった。
その時パルタの停留所では、とっくに遭難したと思われていた一行が到着して大きな騒ぎとなったのは言うまでもない。
国境に最も近い町【パルタ】でも季節はずれの戻り寒波のせいで人々の表情は寒さに凍りついていた。
雪こそ降っていないが流通が滞り始めており、一部の農村では種蒔きが遅れたりもっと酷いところでは芽吹き始めた新芽が全滅したところもある。
「はあ〜、ようやく着いたわね」
客車から降りたオフェーリアが伸びをした。
「フェリアさんのおかげで無事到着することができました。
本当にありがとうございました」
職員が深く頭を下げる。
今回はオフェーリアがいなければ確実に命を落としていただろう、そんな状況だった。
「あなたたちもやれやれよね。
それとこの様子じゃこれから先も運行停止かしら。
陸路を行くといっても飛竜便以上に困難なんでしょうね」
オフェーリアが選びうる選択肢は3つある。
ひとつ目は運行再開を待って飛竜便で行く。
ふたつ目は馬車を借り切って陸路を行く。
そしてみっつ目は自らが【飛行】で空を飛んでいくことだ。
「うん、どちらにしても詳しい地図がいるわよね」
国境越えの街道はひとつしかなく積雪もないので通行に問題はないらしい。
だが北に向かうにしたがっていつ雪が降り出してもおかしくない。
オフェーリアはひとりで行くことにした。
「あらフェリア、久しぶりじゃない」
オフェーリアは減った食材などの補給に都にやって来ていた。
普段なら滞在している場所に金を落とすため現地で買い物をするのだが、パルタではこの先食料の仕入れも難しくなるだろう。なのでオフェーリアは情報収集を兼ねて都に来たのだ。
「新婚さんがどうしたの?
まさかまた出戻り?」
何という事を言うのだろう。
馴染みの食料品店の女将とはいえ、言っていいこととそうでないことがある。
「違うわよ。
食材の補給にきただけ」
女将の軽口の代償は大量買いに対する大幅な値引きという、利益を減らす結果となった。