『緊急降下の後』
結界の中は魔導ストーブやコンロを使用したことによりようやく暖まりつつあった。
そしてオフェーリアたちも落ち着いて夕食を摂ることができる。
「竜くん、少し元気になったみたいね」
「病気や怪我じゃないから、身体が暖まれば動けるようになる。
ただ上空の気温が想像以上に低くてああなったんだと思う。
だから大陸でも北部は冬季は運行を中止するんだ」
しかし今回は気温の低い時期が思ったよりも長引いて、ようやく北部への運行が再開したと思えばこんなことになり面目を潰してしまった。
御者はともかく職員はただひたすらに頭を下げて謝罪を繰り返していた。
「今回はしょうがないわよ。
あなたたち、最初の便をキャンセルして様子見してたじゃない。事実天気は良かったわけだし、まさかあんなに寒いとは予想出来なかったでしょう?」
「言い訳のように聞こえるかもしれないが、こんな事はここ何十年もなかったことなんだ」
「まあそれで、私は【ツブネラアロン】の開花時期に間に合いそうなんだけどね」
「さて、いただきましょうか」
前日までと同じくテーブルと椅子を出して4人で座った。
今日のスープはミルク仕立てでベーコンと根菜がたっぷりと入っている。
メインの肉料理はミノタウロスのロース肉を薄切りにしてみじん切りのニンニクとともに炒め、都で流通している、りんごや梨のすりおろしを使った“タレ”であえたものだ。
そして今夜の主食は見た目はまん丸のコロッケだ。
「これは?
うおぅ、なんだこの味は?!」
きつね色の衣の中は、これも都で買ってきた“トマトケチャップ”で味付けしたライスボールだ。
さらにその中にはチーズが入っていて、噛むと熱々のチーズが溶け出してくる。
「あちっ、あつい!だが美味い!」
「ライスコロッケって言うの。
中々イケるでしょ?」
大皿に山盛り盛られたライスコロッケはあっという間になくなった。