『ポーション』
「申し訳ない。
今日も野営をお願いしたい」
出発はしたが前回より揺れた飛竜便は、まだ日が高いにもかかわらず地上に降りてきた。
職員はその異常に気づいていたのだろう。
御者たちがやってくる前にそう言った。
「ええ、大丈夫。
それよりも竜が心配だわ」
何しろ最後は落下しているのではないかと思えるほど急な降下だった。
今も御者たちはオフェーリアたちそっちのけで鞍や金具を取り去っている。
その気配にオフェーリアとともにいる職員は渋い顔をしていた。
「竜くん、どうしたの?」
首を垂れて蹲っている竜に近づき、オフェーリアはその首を撫でた。
そしてこっそりと【鑑定】してみると目立った怪我や病気はないが低体温気味だということが判明した。
「うん、ちょっと冷えちゃったのね。
……ん〜、そうだねぇ、まずはこれを飲んでおこうか」
オフェーリアは異空間収納からポーションを箱で取り出した。
「御者さ〜ん、この子にポーションあげてもいいかしら?」
びっくりして飛んできた御者の目の前で、料理に使う大型のボウルにポーションを注いだ。
まずは5本分、飲むように促すと竜は弱々しく頭をもたげた。
「ゆっくりでいいから全部飲んでね。
低体温は状態異常に分類されるだろうから、どこまで効くかわからないけど、効くまで飲んでもらうしかないわね」
「竜にポーション?いいのですか?」
調薬に魔力を使うポーションは、魔法士が少ないこの大陸では貴重品だ。
それをドバドバとまるで水のように扱っている。
「どれだけ効くかわからないけど、以前竜人族の人が同じような状態だった時は効いたわよ」
人と竜を一緒にしていいとは思わないが、ここは好意に甘えようと思った。