『太陽』
「こんな状況だからそれはいいのだけれど」
オフェーリアには天候を見定めるスキルはないが、外の様子を見ただけで拙いのはわかる。
「結界は万全だし食料はある。
強いて言えばあなたたちの時間の潰し方だけど、そっちは私にできることは少ないわね。
……まぁ、好みの本でも貸すくらいかしら」
「俺たちはうちの竜の世話があるから本は遠慮させてもらう」
もうひとりの御者も隣でコクコクと頷いている。
どうやら世話云々ではなく、単に読書が苦手のようだ。
「あの子の様子はどう?
昨日はかなり衰弱してたようだけど」
今も客車の向こうにいる竜はどうやら寝そべっているようで、長い首の先の頭は見えない。
「おかげさまで暖かい寝床と充分な食事でずいぶん回復した。
何度も言うがあいつらは本当に寒さに弱くてもうここまでもギリギリだった」
オフェーリアは上空で吹雪に遭遇した場合を想像してゾッとした。
3日後、ようやく太陽が顔を出した朝、オフェーリアたちは結界を開けて外に出てみた。
「これなら何とか行けるだろう。
日中の暖かい時間に無理をさせずに飛ばせてみる」
御者2人は全速力で駆けて竜の元に急いだ。そして慣れた手つきで鞍を取り付け客車を繋ぐ金具を接続する。
「よし!
客車を繋ぐ前に翼を慣らす!
お嬢さん、結界を外してくれ」
4日ぶりの外気はまだまだ冷たく感じるがこのくらいなら慣れているとのこと。
現にオフェーリアの前には大きく伸びをした竜が翼を羽ばたかせている。
「いいぞ。
このまま飛び上がれ!!」
『ギャァ』とひと鳴きして飛び上がった竜は、上空をゆっくりと旋回してまたオフェーリアたちの前に降り立った。
「行けますよ!
これから客車を繋ぐので、準備ができたら乗り込んでくれ!
くれぐれも忘れ物のないように」
ようやく先に進めるようだ。