『吹雪の朝』
「こういう場合はどうなるのかしら?」
早朝、オフェーリアがゲルから出ると結界の外は真っ白で、どうやら吹雪いているようだ。
「申し訳ないのですが、この天候では飛竜は飛びません。
今日は待機となります」
結界自体に積もっているわけではないが、外はそれなりに積もっているようだ。
そして雪の勢いは激しく吹きつけている。
「そう、じゃあ朝食にしましょう」
最後に起きてきた職員とともにテーブルを囲んだ。
今朝のメニューはじゃがいものポタージュスープとボイルしたソーセージ、目玉焼きとトマトのスライス、それにロールパンだ。
量はたっぷりとあるので男たちも満足が得られるだろう。
「何から何まで、本当に申し訳ない」
職員は恐縮しているが御者たちはすでにこの状況を受け入れているようだ。
「あのままだったら、俺たちはともかく飛竜は凍死するところでした。
本当に恩に着ます」
朝一番に竜のために大量の水を生成した。
ついでにストックしていたホロホロ鳥の丸焼きを5個ほど提供してやると、嬉しそうに咀嚼していた。
「私はこの後、今まで書き溜めていた書類を整理したいのでゲルに篭らせてもらうわ。
お昼はサンドイッチを置いておくわね」
その後、御者たちに頼まれて竜の身体を拭くための大量の湯を用意したあと宣言通りゲルに入ると中から結界を張った。
「やれやれ、やっとひとりになったわ」
そうして転移したのは、まずはマティアスと【ぼくちゃん】のもとだ。
「うわぁっ!」
突然現れたオフェーリアに、着替えをしていてほぼ全裸だったマティアスが驚いて後ろに飛び退った。
「何よ。ひとを化け物みたいに。
傷ついちゃうわよ」
「ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ。
ただこの格好だろ」
逞しい身体をオフェーリアの目から遮るものは、下腹を覆う下布のみだ。
「あらやだ」