『野営での夕食』
冷えた身体に熱々のシチューが沁み入る。
緊急事態に興奮していた身体が、ホッと安堵したことによって悲鳴をあげ始めた。
芯まで冷え切っていた身体がガタガタと震え始めていて思わず自分で自分を抱きしめていた。
「御者さんたちはストーブの近くに座って。
それから、これは熱々だから気をつけてね」
彼らの目の前であれよあれよという間に結界を張り食事まで供してくれた少女?はこのあたりでは滅多に見かけないエルフだ。
魔法に秀でた彼女の、その保有する収納魔法にしまってあっただろう料理が、あれよあれよといった様子で目の前に並べられていく。
「ああ、美味い」
隣に座った同僚が先にシチューを口にして、思わず言葉が出たようだ。
もう1人もやけどしそうなほど熱々のシチューをスプーンですくい口に入れた。
「ああ〜」
飲み下すと胃の腑からじわじわと熱が広がっていく。
御者たちは夢中でシチューをかき込んでいた。
片や職員は初めて食べたから揚げに心奪われていた。
最初は見慣れない見かけに不審そうにしていたが、一口齧ってからは表情が変わった。
「皆さんそれぞれ気に入ってもらえたようでよかったわ」
特に御者の2人は昼食も摂っていなかった。
事実彼らは低体温の一歩手前であったのだ。
「たくさんあるので遠慮なくおかわりもしてくださいね。
あ……」
何かを思い出したように後ろを向いた。
そちらは客車があって、その向こうには竜がいる。
「あの子の食事はどうなってます?」
「普通は仕事中はやらないんだが」
「それはちょっとかわいそうですね。
……オークでよければ提供しますけど?」
ちなみに、オークのトンカツは美味である。