『テールシチュー』
チウとの楽しい食事会?を終えたオフェーリアは部屋に戻って鍵をかけた。
その上結界石を使って結界を張り、転移する。
「キュキュー!」
ちょうど【ぼくちゃん】の真前に転移してきたオフェーリアは飛びつかれて尻餅をつきそうになってしまう。
それを支えたのはもちろんマティアスだ。
「おかえり。今日は早かったな」
昨夜は戻って来ていないので少々ご機嫌斜めなマティアスである。
「うん、夕食は済ませてきたんだけど顔が見たくて……」
【ぼくちゃん】がキューキュー鳴きながらオフェーリアの手に自分の頭を押しつけてくる。
「飛竜便の再開が遅れていて、情報集めにちょうどいいから今の町に数日逗留することにしたの」
「春の訪れが遅れているなんて。
気持ち悪いな」
マティアスはあまり寒さに強くない。
なのでまだまだ寒いはずの上空を飛んでいる飛竜たちに同情してしまう。
「たまにあることらしいけど、今まではほんの数日だったらしいわ。
今回はもう3週間続いているそうよ?」
「ふぅん」
そこからはかなり遠い場所にいるマティアスはピンとこないらしいが、異常気象は遠からずこの世界全体に影響を及ぼすことになるかもしれない。
「キュー、キュー」
【ぼくちゃん】がおねだりを始めたことによってこの話題は一旦終わる。
「夕餉はまだね?」
異空間収納からストックされていたシチューを取り出すと魔導コンロにかけて温める。
メインは白身魚のフライタルタルソースかけ、そしてたっぷりのロールパン。
いつもより品数は少ないが量はたっぷりだ。
「これは……ミノタウロスのテールシチューか?」
「正解!」
デミグラスベースのシチューはたっぷりのテール肉で食べ応えがある。
付け合わせのマッシュポテトといっしょに皿に盛って、男2人の前に出してやるとすぐにそわそわし始めた。




