『炭鉱都市のドワーフ』
「グムリですか……」
何やらギルド長の表情が微妙だ。
「……彼は今、鍛治ギルドまで動かして、この炭鉱都市の鍛治師社会をひっくり返していますよ」
「鍛治師?」
オフェーリアには解体士であるグムリと鍛治師たちとの関係がよくわからない。
「フェリア殿はご存じないかもしれませんが、このマゲンヌの鍛治師はほとんどがドワーフでしてね。グムリもその一族なのです。
ちなみに炭鉱夫を取りまとめているのも彼らドワーフです」
今も昔もあまり街中を彷徨くことがなかったオフェーリアにとって、この町のドワーフとは交流がなかった。
ごくたまに雑貨店などを営む彼らと出会うくらいだ。
「でも彼らは吝嗇で有名でしょう?
……いくら知人の頼みでも、そんなことで動くのかしら」
「……火竜の素材で目の色を変えてるんですよ」
「ああ、なるほどね」
火竜の鱗や骨などを武器を作成するために融合させるという話を聞いたことがある。
実は最近竜種はほとんど姿を現すことがない。
その素材を手に入れようとするとダンジョンの深部で討伐するしかなかった。
そしてそれは現在はとても難しい。
「何か大事になってしまったわね」
「大事にしたのはグムリです」
ギルド長は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
オフェーリアは今回グムリ経由の人脈には事の成否を問わず配慮が必要かもしれない。
「その本人は何処なの?」
「あれからギルドには来ていませんし、噂は聞きますが姿は見せませんね。
話は変わりますが例の火竜のオークションが決まりました。
今、丸ごと一頭か素材ごとにバラすか開催者と相談中です」
どちらにしても天文学的な数字の価格になるだろうが、オフェーリアは頓着していない。