『若旦那たちとのお喋り』
若旦那3人組との会話は当初思ったよりも盛り上がった。
商談で色々なところを回る彼らの、ウィットに富んだ話は正直楽しい。
オフェーリアは様子を見て話題を北部地域のものに変えていった。
「へえ、じゃあ今回の旅路は北に向かってるんだ」
「ええ、具体的には【バロア】に。
ある特殊な素材に関して調べに行くのよ。
そしてできれば現物を手に入れたいと思っているの」
「【バロア】かぁ。
あっちは今年は春の訪れが遅れていると聞いたな」
「そうだな。
うちの行商が未だに入国出来ずにいるよ。
こんなことは何十年ぶりかと年嵩の連中が言っていた」
「飛竜便でどこまで行けるかわからないけど、街道は険しいところもあるから、気をつけた方がいい」
「差し支えなければどんな素材を探しているのか聞いてもいい?」
「【ツブネラアロン】という花を探しているの。
聞いたことはないかしら」
3人組は互いに顔を見合わせている。
そしてしばらくして、考え込んでいたべダムが口を開いた。
「うちは行商に持っていく分の薬しか扱ってないんだけど、たまに辺境から希少な素材を買い取ってくることがあるんだ」
彼は先ほど行商云々と言っていた人物だ。
「僕はその【ツブネラアロン】って言う名は聞いたことはないけど、うちの親父や年寄り連中に聞けば何かわかるかもしれない」
彼の商会は元は行商を主にしていて大きくなったそうだ。
なので【バロア】にも定期的に足を運ぶ。
「もしフェリアさんの時間が許すのなら店に帰って聞いてみるけど、どう?」
彼はオフェーリアが明日の便を予約しているのを知っていたので遠慮がちに聞いてくる。
その申し出に対してオフェーリアはその紫の瞳を輝かせて「是非に」と答えたのだ。




