『若旦那たちのナンパ?』
幼馴染の若旦那3人組は商売ではライバルだが価値観が近いのでよくいっしょに行動することがある。
今回もそうでまずまずの成果をあげて帰ってきた3人は反省会をしながらの昼食を摂っていた。
「おい、あれ……」
席が入り口の方を向いていたチウが一番に気づいた。
あとの2人が振り向くと、見覚えのあるローブを着た小柄な人物が店員に案内されてこちらの方に向かってくる。
ダメ元で声をかけてみると目深に被ったフードの奥から紫色の瞳が向けられた。
「あら」
驚いたことに小首を傾げた少女?がその歩調を緩めてこちらを窺っている。
そして店員に声をかけて近づいてきた。
「せっかくだからご一緒させてもらおうかしら」
まさかの言葉に飛び上がるようにして立ち上がった3人組は、まるで給仕のように椅子を引いて少女が腰を下ろすのを待った。
ローブの袷の留め具が外され、フードが下ろされる。
きっちりと中に仕舞い込まれた髪がフワリと舞った。
艶やかな金色の髪と紫の瞳、そして尖った耳。
「エルフ……?」
「エルフだ」
「!!」
唖然とする3人組の前で優雅な仕草でローブを脱ぎ、店員に預けるとようやく腰を下ろした。
「エルフは初めてかしら?
まあ、あまり行動的な種族ではないけど」
オフェーリアは苦笑して、店員からメニューを受け取る。
「ええ、はい。
いえ、私はチウ・バタムといいます。
このベルダリオに本店を構えるバタム商会の副商会長をしています。
それからこちらはべダム・リッポーとガム・ソリート、私と同じように家業の商会に勤めています」
「ご丁寧にありがとう。
私はオフェーリア。ご存知の通りビドー大学院で学士をしています。
……それから私に敬語は不要です」
オフェーリアがうふふと笑う。