『飛竜便2日目』
昨夜遅くトルキーアにとった宿に戻ってきたオフェーリアはそこで就寝し、朝まだ明けきらない時間に目を覚ました。
今日は国境を越えて隣国に向かう。
隣国のサイベラ、オフェーリアにはもちろん初めて向かう国だ。
その首都ベルダリオでは複数の路線に枝分かれしていて、今回オフェーリアが乗るのは辺境にむかう特殊な便だ。
「おはようございます。
早いですね」
使った部屋を軽く片付けて忘れ物がないか確かめたあと、オフェーリアは食堂に降りてきた。
「おはようございます。
忙しい時間に申し訳ないのだけど、昼食用に何か作ってもらえないかしら」
「はい、サンドイッチでいいですか?」
「お願いします」
昨夜は素泊まりだった客に女将は好奇に満ちた目を向けている。
だがオフェーリアは素知らぬ様子をとっていた。
片や宿の女将の方は珍しい少女のひとり旅にどうしても様子を窺ってしまう。
まさか彼女がエルフで自分よりもずっと年上だとは思いも寄らないせいだ。
「おはようございます」
飛竜便の停留所も2回目となれば戸惑いもない。
オフェーリアは昨日よりも幾分大きな客車に、昨日よりは少し少ない金貨5枚を支払って乗り込んでいった。
「おはようございます。
今日は、何事もなければ昼過ぎには次の停留所、【サイベラ】のベルダリオに到着します」
どうやら昼食はいらなかったようだ。
そして昨日と違って今日は乗客の数が多い。
さすがに隣の席に座ってくる者はいないがほぼすべての列に客が座っている。
そんな乗客の中にはひとり旅の少女であるオフェーリアに、当然のことながら声をかけてくる者がいた。
「ねぇ彼女、ひとりなの?
僕たちといっしょにどう?」
オフェーリアが一番嫌いな類の輩だ。




