『宴会3』
オフェーリアもマティアスも冒険者だった時があったので傭兵たちのどんちゃん騒ぎにも慣れていた。
30人もいればいくつものグループが出来上がり、それぞれが盛り上がって騒いでいる。
「うん、こうなることは予想してたけど……」
「ここは安心してハメを外せるからな。
……エールの追加はどうする?」
「今夜は思いっきり楽しんでもらいましょ」
揚げあがったコロッケと共にエールの樽を提供し、引き続きコロッケを揚げる。
これはたっぷりの切り落とし肉を細かく刻み、炒め煮して味付けする。そして炒めたみじん切り玉ねぎといっしょに潰したジャガイモに混ぜ込んで成型したものだ。
これにパン粉の衣をつけて揚げるのがオフェーリア特製コロッケだ。
「うん、美味い」
揚げたてのサクサク熱々を助手の特権でつまみ食いするのはマティアスだ。
もう十何年も王を務めている彼だが、こうしてオフェーリアといると素の自分を出すことができる。
「さっさとこんな生活は辞めて、フェリアと【ぼくちゃん】とで冒険者稼業に戻りたい」
ボソリと呟いた独り言はちゃんとオフェーリアに聞こえている。
だがあえて素知らぬふりをしたのは武人の情けだったのかもしれない。
「キュ?」
顔見知りの傭兵たちに遊んでもらって【ぼくちゃん】はご機嫌だった。
昨夜は【酒場ダンス】という、だんだんと足の動きが速くなるステップを教えてもらいその意外な才能?にやんやの歓声と拍手をもらって気持ちよく眠りについた彼だったが、起きてみるとフェリアママがいない。
「キュキュ〜、キュゥ」
あわてて寝台から降りてゲルの中を走って外に出ると、そこには【ぼくちゃん】が見たことがないほど厳しい表情をしたマティアスパパが腕組みをして佇んでいた。