『飛竜便3』
早朝、指定された時間に停留所に向かうとすぐに発着場に案内された。
そこにはかなりの大きさの風竜と、大型の乗り合い馬車の客車部分のような客車が乗客を待っていた。
「おはようございます。
運賃はこちらでいただきます」
オフェーリアは前日聞いていた通り金貨6枚を支払い、領収書を受け取った。
これが道中で一時的に客車から降りたとき、再度乗車するための標となるので紛失しないように念押しされた。
そして天井も十分高い客車に乗ると、左右に2脚ずつ6列の座席が並んでいた。
そして最後部には世話役の職員の席と乗客の荷物を置く場所、そしてトイレと洗面所がある。
窓には外がよく見えるようにガラスがはめられカーテンまでついている。
「本日のお客様は5名です。
出来るだけ左右に分かれて着席願います」
それだけの人数ならゆっくりと景色を見ながら時を過ごせそうだ。
普通の長距離乗り合い馬車と違って高額な飛竜便は、乗客もマナーが良くてオフェーリアが話しかけて欲しくないオーラを出していると一切声をかけてこない。
夕刻まで丸々客車の中だが、低い雲の上を飛んでいるときの空を見たり読書をしたり、目一杯ゆっくりできた。
一方、朝一の飛竜便を送り出した停留所では、業務を終えた職員たちが雑談に花を咲かせていた。
「そう言えば今日はかなり珍しいお客様がいらっしゃったそうだね」
「ああ!あの方ならチラッと見た!」
「私は初めてお目にかかりました!」
本来なら個別のお客様の噂をするなんて完全にマナー違反だ。だがそれでも話題になるのは中大陸では滅多に見ない、その種族故だ。
「フードを被ってらっしゃるけど……エルフですよね?」
「私はあの特徴的なお耳を見ましたよ」
「彼女はエルフじゃなくてハイエルフだと思う」
オフェーリアと直接遣り取りした職員の爆弾発言で、事務所は阿鼻叫喚の嵐に見舞われた。




