『飛竜便2』
「運賃は乗車の直前にいただきます。
何しろ移動手段が生物ですのでね、天候などでこの便が飛ばない場合もありますので」
さもありなん、である。
「そして遅延やそのときの事情により緊急の野営になることがありますので、飛竜便の乗客には最低限の備えをお願いしています」
「えーっと、飛竜便での移動はどういう形なのでしょうか?」
先ほど上空を飛んでいった飛竜は何も着けていなかったように見えたのだが。
「ああ、ご存知なかったのですね。
飛竜便は客車部分を腹の下に吊り下げる形となります。
飛竜自体が魔法を併用して飛ぶのでほとんど揺れはありませんよ」
職員は笑顔で言ったが、それは揺れることもあるのと同義だ。
その時は覚悟しようとオフェーリアは思った。
「それで“備え”と言うのは?」
「主に食料ですね。
元々昼食は各自用意していただくことになっておりますし、保存食など準備お願いします。
簡単なテントや毛布などは客車に装備してございます」
そのあと明日乗る便の集合時間や今夜の宿、そして先ほどの保存食などが買える店舗まで、あらゆることを教えてくれた。
そして最後にオフェーリアが向かう【バロア】について最新の情報をくれたのだ。
「バロアは今年は春の訪れが少し遅れているようです。
雪解けが遅れていて、山間部では未だに雪が降る日もあるようです。
王都までは何とか到着出来るようですが、先日も一度欠航になっています。
緊急の野営の可能性も高いので、各停留所では最新の情報を得て下さい」
この後オフェーリアは乗客名簿にサインした。
これで予約終了だ。