『惨状からその後』
その村のあちこちから黒煙が途切れなく上がっていた。
なのに村内には動きがない。
ここも避難してきた旅人が滞在していたはずなのだが……
「何てこと」
村のメインストリートに溢れる亡骸、亡骸、亡骸。
おそらく建物の中も同じだろう。
そしてこれは魔獣の仕業ではない。
決して。
「これは剣で斬られている。
一体誰がこんな田舎の村を襲ったの?
そして襲ったあと何処に?
ここにくるのに行き会わなかったわよ」
可能性が高いのは野盗だろうか。
手口から見て軍隊の可能性も無いわけではないが、もしそうなら事後に隠れたりはしないだろう。
「兵士を連れてくるにしてもビドーからは無理だし、この前の村から連れてくるにしても……
困ったわね」
この後オフェーリアはひとつ前の村にとって返し、兵士を1人抱えて【飛行】した。
かなりの速度で飛んだため兵士は目を回しそうになっていたが、隣村の惨状を見て一気に覚めたようだ。
そして彼のプロの目で見てもこれはおそらく野盗の仕業であろうとのこと。
もう商人たちを探すとか言っている場合ではないので、このルートは一旦諦めることになった。
「はぁ、うまくいかないものね」
報告を兼ねて【ビドー】に戻ってきたオフェーリアはアグジェントに愚痴っていた。
「大体の分布場所は判明しておりますので、一度行ってみられますか?」
そうなのだ。
アグジェントたち大学院関係者は人海戦術で書物を漁り、いくつかの手がかりを掴んでくれたのだ。
「それに関しては本当に感謝しているわ。
ありがとう」
「なんの。
我々も今は動きの取れない状態です。
皆、書物を前に嬉々としておりました」
それは未だ結界内に留まっている彼らの格好の“暇つぶし”となったのだ。




