『人探し』
【ビドー】の町は門が完全に閉じられて、今そこを出入り出来るのは兵士や一部の伝令など限られた者だけになっていた。
その防壁のなか各区画は変わりなしだったので、オフェーリアは門前に並んでいた連中が避難している村にやっていていた。
「おう、あんたも避難して来たのか?」
見張りとして立っている兵士に声をかけられた。
村の入り口には即席で作った防壁が廻らされていて、今もその工事は続いている。
「人を探しているの。
今回避難してきた商人の人なんですけど」
うっかり名前を聞きそびれたか、聞いても覚えられなかったのか、思い浮かばない。
「商人ならあそこの宿に固まって泊まっている。あっと、お嬢さん、身分証を見せてくれるか?」
ギルドカードを提示して、無事村の中に入ったオフェーリアは教えられた宿に向かって歩いて行く。
この緊急事態で普段の倍ほどの人口になった村は臨時の店や食堂などができて賑やかなものだ。
「んんー、やっぱり闇雲にやってきてもダメかな〜」
宿屋だけでなく臨時で旅人を泊めている村人の家まで訪れて件の商人2人を探していたが、見かけたという情報すらなくどうやらこの村ではなかったようだ。
この村で最初に接触した兵士から他の避難村の話を聞いてそちらに移動することにしたオフェーリアは、あと2ヶ所あるという村に向かう。
いったことのない場所に転移は出来ないので【飛行】で向かうオフェーリアだったが、街道沿いにそろそろ着くかと思っていると進行方向に黒煙が見えてきた。
とてつもなく嫌な予感がする。
飛行する速度を上げて近づくと、もうそれは間違えようのない状況が見えてきた。
「何で?!どうして!!」