『懇願』
オフェーリアとグムリはダンジョン探索の話で盛り上がっていた。
「やっぱり竜種が最高だぜ!!」
「まぁ、見映えはいいわよね」
「だが俺はあいつらがダンジョン以外で目撃されたって話は聞いた事がない」
オフェーリアはふと思い出して口にした。
「ん〜
それって以前聞いた事があるわ。
どのくらい前かわからないけど、昔は普通に居たらしいわよ。
火竜や雷竜が都市を襲って、一夜にして国が滅んだ、なんてお伽話みたいなのを聞いた事がある。
お伽話と違うのはその一部始終を見てきた人が話してくれたことね」
「おお!
あんたたちは長生きだからな」
「今日渡したのは若い個体でそれほど大きくないけど、それなりの年を経た個体はかなりの大きさよ。
私が最下層で遭遇した“エンシェントドラゴン”はもう山の如くって、何?!」
グムリが血走った目でオフェーリアを見つめ、その腕を掴んでいる。
「それ、それを、あんたは……」
わなわなと口許を震わせるグムリは言葉になっていない。
「もちろん討伐してきたわよ。
ダンジョン主だもの」
「っ!頼むっ!!」
素早く椅子から降りたグムリが床に伏せて土下座をしている。
呆気にとられたオフェーリアが何かを言う前にグムリが続けた。
「ぜひ、ぜひ、ひと目拝ませてくれ。
お願いします」
また頭を床につきそうになるまで下げて懇願してくるグムリにオフェーリアは困ってしまう。
「ち、ちょっと、まわりが見てるからやめてよ。
とりあえず座って」
顔をあげたグムリが期待に満ちた眼差しでオフェーリアを見ている。
「あのね、アレは凄く大きいの。
だからあの解体場では出せないし、人目があるところで出したら騒ぎになるわよ」
それでもグムリは退きそうにない。